以前にもサッカーのことを書いたことがあるが、今回は実際に見た後の感想のような
ものを書こうと思う。この間に、トラブゾンで息子と一緒に、トラブゾン・スポールと
2部リーグのギュムシュハーネのプレシーズン・マッチ、イスタンブールで、フェネバ
バフチェ対ガラタサライのTSYDカップ、同じくイスタンブールで、ベシククシュと
イスラエルのヘペル・ハイファのヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグの予備戦、ガジ
アンテップでガジアンテップ・スポールとアンタルヤ・スポールのリーグ戦公式試合、
この4回見る機会を得た。
トラブゾンでの試合以外が、全て公式戦である。だからトラブゾンでの試合の雰囲気
は、決して本物のそれとは違い、ましてや相手は2部リーグのチームということもあり
終始穏やかであった。ただ、相手の選手紹介のときのブーイング、爆竹・花火の投げ込
みには、正直期待はしていたものの、頭の上から落ちてきはしないかと不安をかきたて
たものである。他方イスタンブールでの試合は、その盛り上がりは実に凄まじいものが
ある。TSYDカップというのは、毎年リーグ戦開始前に行われる公式戦で、時期的性
格からして、盛り上がりは欠けるのではと、観戦前は懸念していたが、とんでもない。
夜8時半スタートの試合だったが。念のため昼の12時頃にテケットを買いにいってみる
と、30度を越す暑さの中、もうサポーターたちは列を成していた。更に約1時間ほど前
にスタジアムに着くと、早くも遠くから歓声は聞こえてるは、大変な盛り上がりようで
ある。中に入ると全員が立ちっぱなしである。選手がウォーミングアップに現れると、
一人一人の選手の名を呼ぶ。すると選手も。手振り身振りでスタンドに応える。すると
また、スタンドが揺れるという具合である。他方、相手の選手の名が読み上げられると、
一斉のブーイングが起こり、更にグランド内へと、爆竹やら花火を投げ入れる。ゴール
裏のスタンドを見ると、発煙筒を炊いたのか、花火に火を付けたのか、煙がもうもうと
上がっている。もう、尋常じゃ一ない。観客はといえば、もっとおっさんが多いのかと
実際にスタジアムに足を運ぶまでは考えていたが、そこは圧倒的に若い男たちの集まる
場であった。それこそエネルギーを発散したくてしたくてうずうずしている若い連中で
ある。よくぞスタジアムで、そのあり余ったエネルギーを発散してくれている。うかつ
に街中で、これだけのエネルギーが燃え出すとと思うと、背筋が寒くなるほどの迫力で
ある。彼らは、常に叫んでいるか歌っているかである。ハーフタイムになっても、誰も
座らない。試合中と全く同じである。疲れを知らない連中が叫び、歌っている中で、こ
のフェネルパフチェのサポーターは、不思議なことに席だけはきっちり守っている。僕
の場合、せっかくトルコでサシカーを見るのだからと、「番号付きの席」、早い話が指
定席を買ったものだから、そうであったのかもしれないが、皆、律義に自らの席を守っ
ている。ベシククシュのホームグラウンド、イノニュ・スタジアムで見たときは、フェ
ネルバフチェより、同じイスタンブールのチームであるにもかかわらず、ずっと都会的
な応援なんだけど、席は随分と乱れていたと見受けた。この秩序はいったいどういう論
理なのか分からないほど、席だけは乱れれなかった。TSYDカップは、相手がガラタ
サライだったものだから、余計に盛り上がったのかもしれないが、そのガラタサライが、
前半4分にルーマニア代表ハギ(ジ)が、見事なフリーキックを決めると、一瞬何が起
こったのか分からないという感じで少しざわついた後、完全にスタジアムが静まり返っ
た。いわゆる凍り付くというやっである。そのかわりフェネルバフチェが点を取ると、
大変な騒ぎだし、また相手にレッドカードをもらう選手が出ると、それはそれ、日本語
では口に出せないような汚い言葉を、その選手に声を揃えて浴びせ掛ける。このような
観客総立ちパターンは、ベシククシュの試合を見たときも、同じだった。
ところが、ガジアンテップという東南部の都市で見た試合は、これらに比べると、実
にのどかとも言える雰囲気であった。まず、観客が最初から最後まで座っている。女、
子どもが随分と多い。父親に連れられた子どもたちが、手真似、口真似で、父親そっく
りに応援する姿を見ると、実にほほえましく感じる。そして常に熱くなっていない。い
い攻撃に反応する。スペインのマドリッドで見たときほどの冷静さに至るまでは、まだ
まだ距離があるが、イスタンブールでの応援風景に比べると、断然こちらの方が試合を
観ているという感じ。だから、イスタンブールの2試合が、たまたまホームチームが不
本意な結果に終わったので、起こったことかもしれないが、警備に当っている警官との
衝突なんか、ガジアンテップでは考えもつかない。ここでは娯楽であり、日曜日の夕方
を、友だち同士で、家族と共に楽しむスポーツ観戦である。ところがイスタンブールの
それは、個々人の存在を掛けたバトルである。
テレビ中継は、特別なことがない限り、4大チームの試合しか放映しない。だからそ
の雰囲気ばかりが、目に焼きついており、それがトルコのザツカーの雰囲気と考えられ
がちだが、ところがどっこい、その地域その地域の雰囲気が、それぞれのスタジアムに
あるのだろう。また、それが地元とクラブチームの関係を、より深いものにしていって
いるのかとも思う。また機会があれば、自分の応援するフェネルバフチェを初めとする
イスタンブールの有名クラブの試合だけではなく、地方のスタジアムに今後も足を運び
続けたいと考えている。
(注)WOWWOWに相当するCINE5などが、サッカーの試合を中継するよう
になり、設備が着いていないと、TV観戦が、ままならないようになっている現
状がある。なおTRTが、2部リーグの試合を中継しているので、TV観戦が出
来るのは、4大チームだけではないことを付記しておく。
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