ホパの街に留まったのは、2回、通り過ぎたことは、また、それだけの回数があると記憶している。トラブゾンからリゼを過ぎ、一路、グルジアに向かう道の果てに、ホパがある。ここまで、黒海沿いに小さな町が連なってきてはいるのですが、これより東には、町と呼べるものはない。最初、ここを訪れたときのこと、ようく覚えている。この町に入った途端、あまりに閑散としているのに、体がすくんだことを覚えている。それに輪をかけたのが、海岸沿いに、一部けばい建物が。そうです、明らかに旧ソ連系のマダムやら、ナターシャやらを当てにしたホテルなんかの建物だった。街中にホテルがあるとは思わなかった黄紺は、その一つに投宿した。中のインテリアの色合いに引くしかなかった。だって、濃いめの紫を基調としていたんだもの。海岸沿いの道路には、何台もトラックが停まっていた。方角は、グルジア方向を向いていた。人が、ほとんど通らない海岸に、数多くのトラックが並ぶ姿は、異様なものだった。一筋だけあるメーンストリ−ト沿いに、僅かに店が並ぶ。そこには、普通のトルコがあった。ホントに小さなトルコがあった。でも、ちょっと道を外れると、そこは、知らないトルコが待っていた。そんななか、水か何かを買おうと1軒の店に入ると、私たち東洋人と同じ顔に出会った。そういった人たち(ラズ)がいるとは聞いていたが、ここで出会うなどとは思っていなかったので、似てる、似てるで盛り上がったのが、ちょっとした癒しとなった。
翌朝、何も知らないで、サルプ行きのドルムシュに乗った。黄紺は、その時点まで、サルプというちょっとした町があるものと思っていたら、道はどんどんと狭くなり、岩肌が海に迫ってきて、広漠たる風景になっていく。最後に、車が、ぐるっと右折をしたら、到着という。もう、呆然とするしかなかった。目の前にあったのは、国境検問所と、外国人立ち入り禁止の立っている国境の村、国境で分断されている村サルプへの入口があっただけだった。黄紺は、最初、国境検問所と気付いてなく、中へどんどん入っていって、ポリスに呼び止められることとなる。その警官は、グルジアへの入国を取りはからってやろうと言ってくれたが、ヴィザのなかった黄紺には適わず、結局、そのポリスとだべってるなかで、アルダハンを教えられただけで、旧ソ連系のマダムらと一緒にタクシーに乗り、このホパに戻ってくることとなったのだった。
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